サイレンススズカ第4コーナー前にて散る···歴代最強馬最期の勇姿
この天皇賞・秋でサイレンススズカはゴール板を突き抜ける事なく、生涯に幕をとじることになります。そよ風のように現れ、最後は星のように輝いて空へ飛びたった彼を忘れることはありません
天皇賞・秋では、戦前から武豊騎手が宣言していた通り「もっとハイスピードで飛ばす」サイレンススズカがどこまで衝撃のレコードタイムを魅せるのかという一点にファンの注目が集まっていました。
冒頭でお伝えした通り「サラブレッドは能力に限界がある」ので最高峰のレースでは特にジョッキーが位置取りの判断、その馬の気性などを判断します。
そうする事でその馬の持つ限界能力如何に発揮させる事が出来るかで勝敗が決まるのが「競馬」だと思っています。
しかしこの天皇賞·秋に関してだけはそういった競馬レースとしては見ていませんでした。
サイレンススズカがサラブレッドの従来持っている限界能力をどこまで超越できるかというある意味「競馬」というレースの枠組を超えたものを期待していました。
僕は基本的に「単勝馬券派」なのですが単勝オッズ「1.2倍」という賭け事としては全く魅力のないサイレンススズカの単勝馬券を3万円買いました。
今でもその単勝馬券は大切にお守りとして持ってます。
まずは、悲しみに浸る前にサイレンススズカがこの天皇賞・秋で魅せた1000m通過時のラップを基に仮想走破タイムを検証していきます。
天皇賞・秋の1000m通過ラップタイムから走破タイムを推定する
まず、毎日王冠開催週とこの天皇賞・秋開催週の東京競馬場芝コースのコンディションを比較してみます↓
どちらもタフなコンディションですが、毎日王冠時より天皇賞・秋開催時の方が更に「時計は出にくくなっていた」可能性が高いです。そこをまず念頭において検証します。
続いて↓がサイレンススズカの天皇賞・秋の前半1000m通過タイムです(下段は毎日王冠時)
天皇賞・秋の1000m通過タイムは「57.4」と毎日王冠時より「0.3秒」速いペースで飛ばしているのでコンディションが悪化している事を考慮すると毎日王冠時より「0.5秒〜0.7秒」程度速いペースで通過したと僕は考えてます。
タラレバ論を語る事はとても虚しいと分かっていつつも····
タラレバ論を語るのは非常に虚しい事だと分かってはいますが、この天皇賞・秋だけは考えたいと思います。
ではまずサイレンススズカの毎日王冠のラップタイムを再度↓の表でみて見ます。
ラスト200mは明らかに流していた(毎日王冠のレースをご参照ください)のであと残り200mを「11.5秒」程度で走る事は簡単だったはずです。
更に200m先のラップはどうなっていたでしょうか?まず1800mのラップを「11.5秒」と想定通過タイムを「1.43.9秒」とします。これは非常に現実的で無理のない数字と考えます。
では、その先のラスト200mはどうか?天皇賞・秋は毎日王冠より「0.3秒」速く飛ばした事、かつ馬場コンディションが若干悪かった事の2点を考慮して「12.2秒」でフィニッシュしたととりあえず結論付けました↓表
前半:57.4秒〜後半:58.8秒→走破タイム●1.56.1秒。これだけでも実際の天皇賞・秋の勝ち馬より3秒以上速い時計なので、15馬身以上の大差で圧勝していた可能性が高いと思います。
サイレンススズカの真の能力はそれぞれのファンの心の中にある···
ここまではタラレバ論である事に気を遣い、常識的な想定をしましたが、もちろんこんな程度の走破時計が限界のサラブレッドだとしたら、僕はサイレンススズカに魅了されることはありません。
敢えてこれ以上の「仮想天皇賞馬」サイレンススズカについては触れません。
サイレンススズカが、どこまでサラブレッドの限界を超越できたかはそれぞれ「推しのサイレンススズカ歴代最強馬論者」が自由に夢を持って想像していきましょう!
それではサイレンススズカがレース途中骨折し、予後不良となりこの世から去っていくという胸の痛むレースを「悲劇」としてでは無く、彼の「最期の全力投球」という視点で見ていきましょう。
天皇賞・秋(G1)サイレンススズカ最期の雄姿
この故障について様々な議論や憶測があります。しかし、ある意味こういう事はサラブレッドの宿命とも言えるのではないかと思います。
特にスピード能力が高ければ高い程、脚にかかる負担は大きいのでなおさらです。
その後のG1戦線の主役はサイレンススズカが毎日王冠で子供扱いしたグラスワンダー、エルコンドルパサー中心になりました。
彼らはその後メディアでその活躍が報じられ、華やかな現役生活を送ります。
しかし皮肉にも散ったサイレンススズカは当時、追悼本が一冊発売されただけで(僕は3.4冊は出ると思ってました)徐々に語られる事が少なくなっていました。
しかしそれもサラブレッドの厳しい現実であり、やむを得ないと思います。全ての馬が「生命をかけて疾走る」それが競馬というものだと思います。
優勝馬オフサイドトラップも当然命がけの全力疾走でした
そして非常に大事な事がもう一つあります。このレースを勝った「オフサイドトラップ」もまた同じ様に「命がけで」レースを走った1頭です。
これは出走馬全てに共通する事です。優勝したオフサイドトラップにも当然、とても大きな称賛の栄誉が与えられます。この事も競馬ファン全員決して忘れてはならないと思います。
サイレンススズカの最期は悲しいだけではなく尊く、輝いていた
サイレンススズカの最期の姿は決して悲しいものではありません。サラブレッドの宿命、生命をかけた走りを見せた最期の彼は尊く、とても輝いていました、合掌。
→次のページ:ウマ娘ファンにもおなじみ:懐かしの90年代最強名馬メモリアル